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ようやく思い出せた。

奥さまを亡くされたお父さまへ、娘さんからの退職祝いとしてご依頼いただきました。家族最優先、有言実行、完璧主義だけど恥ずかしがり屋だったお母さま。そんなお母さまを「定年退職したら船で旅行に誘ってみたかった」とぽつりと言ったお父さまの一言を叶えたいとのご依頼でした。夫婦お揃いのネックレスをつけて、家族全員で名古屋港から出航している様子を描きました。



ご遺族の感想

今回は、一生の思い出に残る素敵な絵を描いていただき本当にありがとうございました。残念ながら退職祝い時のサプライズとはならず、娘のドヤ顔でのLINEビデオ通話でのお披露目とはなってしまいましたが、後日改めて手渡しした際に、少し嬉しそうな感慨深そうな表情で「ありがとう」と言って、絵を見ている父の姿を見て、描いていただいて本当によかったなと思いました。母が突然亡くなった当時、あまりにも突然すぎて2人とも悲しさを表に出せないまま、しばらくの日々を過ごしました。

今思えば、お互いに心配させない為に、そして、少しでも母がいた頃を同じような毎日を過ごす為に必死で・・・父はお通夜後の真夜中、ろうそくの番をしている時に私に聞こえないよう声を押し殺して泣いてからは涙を見ませんでした。私も心のバランスを崩した時期もありましたが、仕事は休まず、泣かず、笑顔を意識し続けて、いつしか「母の死」について触れることを避けてしまった事もありました。でも結婚式で母の席や着物を準備し、エンドロール動画で母の名前を見た父が涙を流す姿を見て、また後日、それが嬉しかったと言葉で伝えてくれた事で、少しずつ母の事を笑って穏やかに2人で語り合う事が出来ました。母が見守って一緒にいる気がすると・・・。

今回、絆画のテーマで描いていただいた「船で退職祝い旅行をしたかった」という父の心に秘めていた願いも、そんな流れから何とかして実現したいと思い、大村さんにお願いするきっかけになりました。2人とも前を向いて笑顔で母と向き合える、そんな素敵な特別な一枚です。父には話していませんが、母があの日いつもと違う道で本来するはずのない行動で事故にあった原因は、私自身にあるのではないかとずっと思い続けている中で(私の仕事のリズムに合わせた生活で大変な思いを母にさせていたと思うので)、一生罪悪感は拭えないながらも、最後の朝の母の表情や声が思い出せなくて後悔しかない中で、あの笑顔の母の姿を描いていただいた事は、救いになっています。

本当に、本当にありがとうございました。

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